備えておきたい「デジタル終活」とは?デジタル遺品の整理方法や注意点を解説

スマートフォンやパソコンが日常生活に深く浸透し、多くの人が日々の暮らしでデジタル機器を活用しています。そうした背景から、近年終活の一環として注目されているのが「デジタル終活」です。デジタル終活は従来の終活と同様、家族の負担を軽減しトラブルを未然に防ぐための大切な取り組みです。
本記事では、デジタル終活の基本的な考え方や効率的な進め方、注意点などを詳しく解説します。
目次
デジタル終活とは?
デジタル終活とは、スマートフォンやパソコン、タブレットなどの端末に保存されているデータや、インターネット上のアカウント、各種サービスの契約情報などを生前に整理しておく活動を指します。一般的な「終活」がお墓や葬儀の準備のほか、物理的な財産や書類の整理を中心としていたのに対し、デジタル終活はデジタル上における情報の管理が主な対象です。利用しているサービスの一覧作成、パスワード管理、データの整理、家族への引き継ぎ方法の検討などを行い、デジタル遺品として残される情報を適切に管理することが重要です。
デジタル遺品とアナログ遺品の違い
デジタル遺品とアナログ遺品には、明確な違いがあります。アナログ遺品は、故人が使用していた通帳や印鑑、貴重品、書類など物理的に存在する、形のある遺品です。一方、デジタル遺品は、故人が残したスマートフォンやパソコンの中にあるデータ、インターネット上のアカウント、クラウドサービスに保存されたファイルなど、物理的な形を持たない情報のことを指します。
なぜデジタル終活が重要なのか
デジタル終活の重要性は、現代社会におけるデジタル機器の普及とデジタル社会の加速とともに高まっています。現在ではシニア層においてもスマートフォン利用率が大幅に上昇しており、総務省の「令和6年通信利用動向調査」によるとスマートフォンの保有率は60代が87.0%、70代67.5%と高く、80代も30.7%となっています。
デジタル遺品はアナログの遺品と異なり、物理的に見つけにくく、情報がネット上に長期間残りやすいという特徴があります。また、スマートフォンのロック解除や各アカウントのパスワードが分からない場合、基本的に本人以外がアクセスするのは困難です。家族が把握していないアカウントや契約が数多く存在する場合もあるでしょう。デジタル終活を行わないままだと、「放置されたアカウントが第三者に乗っ取られる」「サブスク等の請求が続いてしまう」「期限切れでクラウドの中のデータが消える」という事態が発生する可能性があり、家族への負担が非常に大きくなります。個人情報や機密情報が含まれている可能性も高く、プライバシーの侵害や金銭的な損失につながるおそれがあるため、適切な対応が必要です。
参考:総務省「令和6年通信利用動向調査」
デジタル終活で整理すべきデジタル遺品の項目
デジタル終活では、多岐にわたるデジタル遺品の整理を行う必要があります。以下に、対象となるデジタル遺品の項目をご紹介します。
情報端末(スマートフォン、パソコン、タブレット)

情報端末には、電話帳、写真、動画、メモ、アプリなど、個人の生活に密接に関わる大量のデータが保存されています。端末のロック解除方法について、パスコード、Face ID、指紋認証などの設定情報を記録しておきましょう。
メールアカウント・メールデータ
メールアカウントには、キャリアメール、Gmail、Yahoo!メール、独自ドメインメールなど、複数のアカウントが含まれる場合があります。各メールアドレスとパスワードの情報を整理し、一覧として記録しておくことが重要です。メールの送受信履歴や本文の内容も、重要な連絡先や取引記録、契約情報などの情報源になります。二段階認証が有効になっている場合は、解除方法や認証アプリの情報もあわせて記録しておきましょう。
SNS
LINE、X(旧Twitter)、Instagram、Facebookなど各SNSのアカウントは、利用状況とアカウント情報を整理しておきましょう。SNSアカウントは個人のプライベートな情報が多く含まれているため、万が一の際の対応方法を明確にしておくことが重要です。
アカウントの放置は不正利用やなりすましなどの被害に遭う可能性があるため、事前にアカウントの削除方法を調べ、家族や信頼できる人に伝えておくと良いでしょう。
ネットバンキング
ネットバンキングにおいては、ログイン情報、取引履歴、保有資産を一覧化し、安全な場所に保管しておくことが必要です。特に仮想通貨は、アクセス不能になると復旧が極めて困難となるため、秘密鍵やパスワードの管理について事前に対策を講じておく必要があります。適切な対応を怠ると、相続トラブルの原因になることもあります。
キャッシュレス決済
近年はキャッシュレス決済の普及が進んでおり、普段から利用している方は多いでしょう。キャッシュレス決済に伴うデジタル遺品は、スマートフォンの中のクレジットカードやデビットカード、電子マネーの決済情報などがあります。近年はクレジットカードやデビットカードを「カードレス」で発行している場合もあるため、現物のカードがない場合はカード番号やアプリのログイン情報などを記録しておきましょう。
また、電子マネーのチャージ残高はサービスによって払い戻しができない場合があり、払い戻しが可能でも、手続きに時間がかかるケースがあります。生前のうちに利用しているサービスについて確認しておくと良いでしょう。
サブスクリプションサービス
継続課金型のサービスに加入している場合は、サービス名、料金、解約方法を把握しておくことが重要です。サブスクリプションサービスは自動更新されるため、利用者が亡くなった後も課金が継続してしまうおそれがあります。定期的に利用状況を見直し、不要なサービスは事前に解約することをおすすめします。
クラウドサービス
Google Drive、Dropbox、iCloudなどのクラウドサービスには、写真、動画、文書ファイルなど、重要なデータが保存されている場合があります。クラウドサービスに保存されているデータの場所と内容を把握し、必要に応じて家族がアクセスできるよう準備しておくことが大切です。多くのクラウドサービスは容量に応じて課金されるため、不要なデータは定期的に整理すると良いでしょう。
デジタル終活の進め方
デジタル終活を効果的に進めるためには、以下の手順に沿うことで効率的に進められます。
デジタル遺品の棚卸し
まずは、現在利用している情報端末やサービスの全体像を把握します。スマートフォン、パソコン、タブレットなどの端末、メールアカウント、SNSアカウント、ネットバンキング、サブスクリプションサービス、クラウドサービスなど、利用しているすべてのサービスをリストアップしましょう。同時に、各サービスのユーザーIDやパスワード、二段階認証の設定などの情報も整理します。
デジタル遺品の分類
棚卸しが完了したら、各デジタル遺品を「残すもの」「隠すもの」「処分するもの」に分類します。
- 残すもの…金融資産、重要書類、家族に引き継ぎたい写真や動画、連絡先など
- 隠すもの…プライベートな内容で家族に見られたくない情報、個人的な日記やメモなど
- 処分するもの…不要なファイルや利用していないアカウント、解約すべき全サービス
分類作業を行うことで、デジタル遺品の管理方法が明確になり、家族の負担を軽減できます。
エンディングノートへの記録
分類作業が完了したら、各デジタル遺品の対応内容をエンディングノートに記載します。エンディングノートには、利用しているサービスの一覧と分類方法、アカウント情報、パスワード、重要なデータの保存場所などを分かりやすく記録します。家族が万が一の際に適切に対応できるよう、エンディングノートは定期的に更新し、最新の情報を維持することが大切です。
デジタル終活でトラブルを避けるための注意点
デジタル終活を行う際は、以下の点に注意してトラブルを防ぎましょう。
家族への共有

デジタル遺品によるトラブルを防ぐには、家族への情報共有が不可欠です。エンディングノートの保管場所、緊急時のアクセス方法、重要なパスワードの管理方法などを信頼できる家族に共有しておきましょう。デジタル遺品の中には経済的価値を持つものもあるため、相続における取り扱いについても事前に検討しておくことが重要です。また、誰に何を引き継ぐかを明確にしておくことで、相続時のトラブルを回避できます。
定期的な見直しを行う
デジタル環境は常に変化しているため、定期的な見直しが必要です。サービスの利用停止やパスワード変更など、状況の変化に応じて都度エンディングノートを更新しましょう。また、不要になったアカウントやアプリは都度自身で削除し、画像や動画、メールといったデータも定期的に整理しておくことが推奨されます。不要なデータを削除しておくことで、個人情報の保護につながり、家族がデジタル遺品の内容を把握しやすくなります。
専門家へ相談する
デジタル終活について不安なことがある場合は、専門機関や専門家に相談することが大切です。国民生活センターや自治体の相談窓口では、デジタル終活に関する相談を受け付けています。特に、複雑な資産管理や相続手続きについては、税理士や弁護士などの専門家の助言を求めることが重要です。
老後の安心した暮らしをサポートするALSOKの「みまもりサポート」
高齢の方がご家族と離れて暮らしている場合、緊急時の対応に不安を抱えていることが多くあります。デジタル終活による情報整理とあわせて、物理的な安全対策も検討することで、より安心した生活を送ることができます。

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まとめ
デジタル終活は、現代社会において重要な終活の一環となっています。しかし、家族と離れて暮らしている場合、なかなか始め方や進め方が分からず、万が一の際に適切に対処できない場合があります。デジタル終活の重要性を理解し、早めの準備を進めると同時に、高齢の親の暮らしを支えるサービスの導入も検討してみてはいかがでしょうか。