企業が災害時に取るべき対応とは?事業継続に備えた対策~前編~

企業が災害時に取るべき対応とは?事業継続に備えた対策~前編~
2024.01.29更新(2022.04.12公開)

災害発生時には、家屋だけではなく企業の事業所なども被災します。近年に発生した数々の大規模な自然災害においても、被災地域で多くの企業が被害を受けました。日本の企業は万が一の被災に備え、従業員の安全確保と共に事業継続を意識した災害対策が不可欠といえるでしょう。

この記事では、企業が平時に取り組むべき災害対策や、必要な備えを解説します。災害発生時に取るべき対応や事業継続のための取り組み、復旧活動までの流れについては後編でご紹介します。

目次

企業にとって災害対策が欠かせない理由

災害時にも事業を継続するには、平時の取り組みに加え災害への備えが欠かせません。災害時は企業として被災地域への貢献も求められるため、可能な限りは事業を止めず、仮に一時停止に追い込まれた場合も早期復旧を図る必要性があります。

日本は災害が発生しやすい

日本はその地形や気象特性などにより、自然災害が起きやすいという諸条件を備えた国土を有しています。加えて近年は温暖化の影響による気候変動が指摘されており、ここ数年も大規模な災害が複数発生している状況です。そのため、企業にも災害発生の可能性を常に意識し、平時から積極的に防災に取り組むことが求められています。

企業防災とは

企業防災とは、企業として取り組む必要のある災害への備えを指し、2つの観点が定義されています。
1つ目は、企業に所属する人の命を守る「防災」の観点です。2つ目は、被災した場合にも業務を止めないこと、もしくは早期復旧を図るための「事業継続」の観点です。ここでは、企業防災のなかでも「防災」に関することを主にご紹介します。「事業継続」に関することは、以下関連コラムに詳しく記載していますので、ぜひご参照ください。

また、国の防災基本計画にも「企業防災」の促進についての記述があります。この防災基本計画では、災害時に企業が果たすべき役割として「生命の安全確保」「二次災害の防止」「事業の継続」「地域貢献・地域との共生」が挙げられています。

参照:内閣府「防災基本計画」

BCP対策(事業継続計画)

BCP対策とは、災害やテロ被害、情報漏洩や感染症の流行などの緊急事態に陥った場合に、事業を早期復旧するための「事業継続計画」のことです。
昨今は、ニューノーマル時代に合わせた柔軟なBCP対策の運用が企業に求められています。
緊急事態は突然発生するため、企業はBCP対策を講じておくことで損害を最小限に留め、事業継続のために速やかに行動することができます。
BCP対策については、以下の記事で詳しくご紹介しています。

安全配慮義務による企業の責任

企業のCSR(社会的責任)の観点に基づく活動の一環として、防災対策を検討する動きもあります。企業は災害への備えを行うだけでなく、災害発生時の具体的な対応や避難などの流れを策定し、すべての関係者に周知しておく必要があります。
企業の安全配慮義務については、以下の記事に詳しく記載しております。こちらも、ぜひご参考にしてください。

帰宅困難者対策条例

東京都などの各自治体では、大規模地震の発生などに伴う帰宅困難者対策を推進するための条例が施行されています。災害発生時にむやみに移動すると、火災や建物の損壊などに巻き込まれたり、ケガをする恐れがあります。
企業には従業員の一斉帰宅の抑制や一時滞在施設の確保、従業員との連絡手段の確保、帰宅支援などが求められています。

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企業が取るべき災害対策

企業防災では、災害が発生した際にどのように対処し、従業員の生命を守って事業を続けるかに焦点が置かれています。ただし、被災時に適切に対処するには、平時からいかに積極的に防災対策に取り組むかが大きくかかわってきます。
ここでは、企業が万が一の災害に備え、平時に取り組んでおくべき対策についてご紹介します。

防災マニュアルの作成

災害時に各従業員がどのように行動すべきかを記載した社内の防災マニュアルを、平時のうちに作成し周知徹底しなければなりません。出社の可否に関することや安否確認の手段、災害発生時の初動対応などを分かりやすく記載したマニュアルを作成し、研修活動や訓練などで全従業員へ共有しておきましょう。

従業員や取引先など関係者の生命を守り安全を確保すること、施設等資産の保護や事業継続、早期復旧などがマニュアル作成の大きな目的です。この中で何よりも優先されるべきものが、人命の安全確保になります。

被災によって混乱が発生していることが想定されるため、マニュアルの記述においてはできるだけ平易な言葉で簡潔に要点をまとめ、誰が読んでもすぐに理解し行動に移せる文書作成を心がけましょう。

企業の防災マニュアル作成については、以下の記事で詳しくご紹介しています。ぜひ、ご参考にしてください。

定期的な訓練の実施

防災マニュアルを策定しただけでは従業員や関係者には浸透しません。災害が発生し被災したという想定で繰り返し防災訓練や避難訓練を実施することで、万が一災害が発生した場合に防災マニュアルに沿った行動や臨機応変な対応が可能となります。

避難訓練の流れについては、以下の記事をご参考にしてください。

防災備蓄品の管理

企業は緊急時のために防災備蓄品を備えておく必要がありますが、購入しただけではなくいざというときに確実に使用できるよう適切に管理しておかなければなりません。
食料や水は、賞味期限(3~5年程度)が定められているため期限までに買い替えが必要です。また、乾電池は使用推奨期限を超えての長期保管は劣化の恐れがあるため、乾電池を使用した備蓄品の管理も必要です。

災害に備えて必要な備蓄品

企業の事業所が災害に遭った場合、防災・事業継続それぞれの観点からまず最優先されるのは、従業員や取引先・顧客など関係者の命を守ることです。そのためには、災害発生直後に従業員や取引先・顧客の身を守り、かつ安全な場所へ避難する際に必要となる備蓄品の確保が不可欠です。
最小限の備蓄品として以下の物品を確保し、すぐに持ち出せる場所に保管しておきましょう。

イラストは防災備蓄における備蓄品例です。

備蓄品チェックリスト

【避難時の飲料水と栄養の確保】

  • 水(飲用可能なもの)
  • 主食(クラッカーやパンなど調理せず食べられるものや、アルファ米などの調理が簡単なもの)

【避難時の睡眠と体温調節】

  • 毛布(仮眠時に使えるほか、寒さから身を守ることにも有用)
  • 保温シート

【避難時の適切な衛生状態の確保】

  • 簡易トイレ
  • 医薬品・衛生用品 など

【その他】

携帯懐中電灯やヘルメット、担架(避難時に必要なものやけが人を運ぶ際に必要になるもの)、ポータブル電源や自家発電機(スマートフォンや携帯電話を充電するため)など

必要となる備蓄品の分量や数量は、従業員数によって変わります。従業員数に対し用意すべき備蓄品の種類や量は、以下の記事にくわしく記載していますのでぜひご参考にしてください。

まとめ

この記事では、企業が平時から取り組むべき防災対策についてご紹介しました。いつ起こるかわからない災害に備え、備蓄品や防災マニュアルを準備するとともに、それらを災害発生時適切に活用するための訓練や情報共有を行いましょう。後編では、万が一災害が発生した際に企業が取るべき具体的な行動や、事業継続に向けた対策についてご紹介します。

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